容量市場の転換点:2029年度オークション結果と指標価格(Net CONE)引上げの衝撃
2026年1月23日に開催された「第110回 制度検討作業部会」において、容量市場の今後を左右する極めて重要な報告と方針案が提示されました。 単なる約定結果の報告に留まらず、脱炭素化に向けた「投資信号」をどう設計し直すかという、制度の根幹に関わる議論が本格化しています。
■議題:容量市場の現状報告と制度見直しの方向性(資料3-1, 3-2, 3-3)
1. 【要約】2029年度メインオークション結果と監視報告
- 約定結果: 2029年度の実需給を対象としたメインオークションでは、目標調達量を上回る約定総容量(約1.6億kW)を確保。供給信頼度は維持されました。
- 価格動向: エリアにより差はあるものの、概ね指標価格を下回る水準で約定。小売電気事業者が負担する拠出金総額は約0.5兆円規模となる試算です。
- 市場監視: 電力・ガス取引監視等委員会による監視の結果、市場支配力による「売り惜しみ」や「価格つり上げ」などの問題行為は確認されませんでした(一部、東北電力による算定誤りは確認・修正済み)。
2. 【Deep Insights】PhD/MBAの視点:10年ぶりの「コスト再定義」が意味するもの
今回の会合で最も注目すべきは、指標価格(Net CONE)および上限価格の見直し方針です。 現行の Net CONE は2015年のコスト検証に基づいた「過去の遺物」となっており、昨今の資材高騰、インフレ、そして脱炭素電源への高い投資コストを反映できていません。
- 投資信号の正常化: 2015年水準の価格設定では、新規の脱炭素電源(蓄電池や水素・アンモニア発電等)の投資回収が困難であるとの認識が示されました。これは、国が「低価格での調達」よりも「将来の供給力確保に向けた適切な価格シグナル」を重視し始めたことを意味します。
- 小売負担とのトレードオフ: Net CONE を引き上げれば、当然ながら小売電気事業者の拠出金負担は増えます。国は「段階的な引き上げ」や、一定価格以上はシングルプライスを適用しない「マルチプライス化」などの緩和策を検討しており、ここが今後の最大のロビーイング・ポイントになります。
3. 事業インパクトと今後の対策
| プレイヤー | 事業インパクト(PLへの影響) | 今後の具体的対策 |
| 電力小売り | 🟡 中(長期的リスク) 拠出金単価の上昇は避けられず、原価高騰要因となる。 | Net CONE 引上げスケジュールを注視し、将来の容量拠出金を織り込んだ販売価格・約款の見直し時期を検討する。 |
| アグリゲーター | 🟡 中 発動指令電源(DR)の約定は安定しているが、他電源のNet CONE引上げにより、相対的な価値が希薄化するリスクがある。 | kW提供に加え、インバランス回避や需給調整市場とのマルチマネタイズにより、アセット全体の収益性を向上させる。 |
| 蓄電池事業者 | 🔴 特大(チャンス) Net CONE の引上げは、蓄電池等の新規アセットの投資回収予見性を劇的に向上させる。 | 改定後の指標価格を前提とした、2030年以降の実需給を見据えた新規投資シミュレーションの即時アップデート。 |
■エナジーアグリラボの眼:戦略的アドバイス
今回の Net CONE 見直し議論は、「安い電力」の時代から「安定・クリーンな供給力に正当な対価を払う」時代への完全な移行を示唆しています。
特に蓄電池事業者は、今回の議論を「追い風」と捉えるべきです。2015年基準の低い天井が取り払われることで、より高度な性能を持つアセットの導入が経済合理性を持ち始めます。一方で、小売事業者は「容量拠出金は変動し、かつ上昇傾向にある」ことを前提としたリスクマネジメントが経営の最優先事項となるでしょう。


