【政策インサイト】長期脱炭素電源オークション変遷から読み解く「第3回」の厳しさと、系統用蓄電池への高いハードル
2026年3月4日に開催された「第112回 制度検討作業部会」では、長期脱炭素電源オークションの第3回入札状況と、落札後の収益監視に関する実務フローが示されました。本オークションは脱炭素電源への投資を支える大動脈ですが、回を追うごとにその設計は精密化し、特に新参入の系統用蓄電池事業者にとっては「使いにくさ」が際立つ内容へと変貌しています。
1.過去の入札との比較:制度は「広く」から「深く」へ
長期脱炭素電源オークションは、第1回(2023年度受渡し分)から今回の第3回にかけて、募集枠や応札要件が大きく変化しています。
- 第1回: 制度開始直後で、蓄電池を含む幅広い分散型リソースの参入が期待されました。募集容量も大きく、まずは「脱炭素電源を増やす」という量的拡大に主眼が置かれていました。
- 第2回〜第3回: 安定供給への寄与(供給力評価)がより厳格に問われるようになりました。特に今回の第3回では、落札後の「他市場収益の還付」や「相対契約の事前監視」といったガバナンス面が強化され、事業者の事務負担と収益予見性の低下が課題となっています。
2. 系統用蓄電池への「二重の逆風」:長時間化と枠の縮小
特に蓄電池事業者が注目すべきは、第1回に比べて格段に厳しくなった技術的・制度的要件です。
- 最低容量(放電時間)の長時間化: 当初は3時間程度の放電能力でも供給力として評価されやすかった蓄電池ですが、系統の安定性維持の観点から、現在は6時間、あるいはそれ以上の長時間放電が実質的な評価の基準となりつつあります。これにより、1MWあたりの設備投資額が跳ね上がり、蓄電池の強みである「瞬発力」を活かしたビジネスモデルが描きにくくなっています。
- 募集枠の限定的運用: 新設電源全体の募集枠の中で、蓄電池などの分散型リソースに割り当てられる「実質的な枠」は、大型電源(LNG専焼化や水素混焼等)の計画に圧迫され、相対的に小さくなっています。これは「確実に大規模な供給力を確保したい」という当局の意図の表れですが、分散型エネルギーによる社会実装を目指すアグリゲーターにとっては、参入障壁が非常に高くなっているのが現状です。
3. 第112回会合の最重要論点:収益監視の「ガラス張り化」
今回の会合で確定したのが、落札後の「収益還付」の具体的フローです。
落札事業者が卸市場等で得た収益が一定を超えた場合、その一部を還付する必要がありますが、この監視が「相対契約」にまで及ぶことが明記されました。契約締結前に監視等委員会のチェックを受ける必要があり、事業者の経営判断の自由度が大幅に制限されることになります。(引用:資料3 P22-23)
エナジーアグリラボの視点(PhD/MBA Insight)
本制度の変遷を俯瞰すると、当局は蓄電池を「調整力の主役」から、より重厚な「基幹供給力」へと脱皮させようとしている意図が読み取れます。しかし、MBA的視点で見れば、最低放電時間の長時間化はCAPEX(設備投資)を増大させ、一方で還付規律は収益のアップサイドを制限するという、極めて厳しい「低利回り・高リスク」の構造を事業者に強いています。
PhD的視点では、この長時間化は系統の物理的慣性力を補うための苦肉の策とも言えますが、蓄電池の本来の経済価値は「高速応答」にあります。2027年度以降の事業開始を目指す新規クライアントは、本オークションのみに依存せず、需給調整市場や容量市場のNet CONE見直し、さらには非化石価値の直接取引を組み合わせた「マルチマネタイズ・アルゴリズム」の構築を、FS(事業性検討)の最優先課題とすべきです。
株式会社エナジーアグリラボは、次世代電力ビジネスの最前線から、制度の行間を読み解き、事業の意思決定を加速させるインサイトを提供します。
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