【政策インサイト】2027年度、容量市場は「激変」のフェーズへ。Net CONE見直しと3年間の緩和措置がもたらすインパクト
2026年3月4日に開催された「第112回 制度検討作業部会」において、容量市場の将来を左右する重要な方針案が提示されました。最大の焦点は、指標価格(Net CONE)の算定電源をこれまでのGT(ガスタービン)からCCGT(コンバインドサイクル)へ変更することに伴う、市場価格の大幅な上昇と、その衝撃を和らげるための「3年間の経過措置」です。
1. なぜ「Net CONE」が見直されるのか(議論の背景)
容量市場の基準となる「Net CONE」は、本来「最も安価に新設できる電源」を指標とすべきものです。これまで日本ではGTが参照されてきましたが、現在の脱炭素化の流れと実際の投資動向を鑑み、より現実的なCCGTへの変更が検討されてきました。
この変更は、容量市場の約定価格の「底上げ」を意味します。投資家には強い投資シグナルを送る一方、拠出金を支払う小売事業者にとっては、かつてないコスト増要因となります。(引用:資料5 P2, P15)
2. 激変を避けるための「3年間の段階的移行」
価格の急騰による市場の混乱を防ぐため、今回の部会では2027年度から2029年度にかけての「3年間の緩和措置」が具体案として議論されました。
- 1年目(2027年度): 現行のGTベースの価格体系を極力維持し、急激な負担増を抑制。
- 2年目(2028年度): GTとCCGTのハイブリッド案(例:移行比率50%)を適用し、段階的に価格を引き上げ。
- 3年目(2029年度): CCGTベースのNet CONEを完全適用。
この「3年間の猶予」の間に、事業者は新たな価格体系への適応(料金転嫁やリスクヘッジ)を完了させる必要があります。(引用:資料5 P16-20)
3. 非効率石炭火力への「稼働抑制」というムチ
一方で、安定供給に寄与しない「非効率な石炭火力」に対しては、厳しい姿勢が示されました。単に容量市場で維持費を受け取るだけでなく、「稼働抑制」を条件とした受取り額の制限や、退出を促すための誘導措置が検討されています。これは、電源構成の強制的なクリーン化を加速させる強力なメッセージです。(引用:資料5 P44)
4. 各ステークホルダーへの事業インパクト分析
本制度変更が、各プレイヤーにどのような影響を与えるかを網羅的に整理します。
事業者カテゴリ
インパクト
具体的影響と対策
電力小売事業者
特大(マイナス)
容量拠出金の負担が数倍に跳ね上がるリスク。 3年間の緩和期間中に、需要家への料金転嫁(値上げ)のロジック構築と周知が不可欠。対策なしでは経営を圧迫する。
系統用蓄電池事業者
特大(プラス)
最大の受益者。 Net CONEの上昇は容量収入のアップサイドに直結。特に4時間計蓄電池の供給力評価が高まる中、2027年度以降のIRRは大幅に改善する見込み。
アグリゲーター
高(チャンス)
容量拠出金の高騰により、需要家側の「ピークカット(DR)」の価値が劇的に向上。「拠出金回避サービス」としてのDR提案が、強力なセールスポイントになる。
発電事業者(ガス等)
高(プラス)
脱炭素電源への投資予見性が高まる。CCGTへの指標変更により、適切な固定費回収が期待できる環境が整う。
発電事業者(石炭)
高(マイナス)
非効率石炭の保有リスクが顕在化。稼働抑制等のペナルティにより、維持コストが収益を上回る「座礁資産化」のリスクがある。
エナジーアグリラボの視点:制度の「出口」を見据えた戦略を
今回のNet CONE見直しは、日本の電力市場が「安価な旧型電源の維持」から「高付加価値な脱炭素電源への投資」へと明確に舵を切ったことを示しています。
今回の奉仕意を踏まえると、本年度の容量市場のメインオークションは今後3年かけて約定価格がの2~3万円/kWへ移行する可能性を含んでいます。このため、系統蓄電池事業者などは収益の改善が見込まれます。
一方で特に小売事業者は、この3年間の緩和期間を「単なる猶予」と捉えてはなりません。2029年度に訪れる「フルコストの負担」から逆算し、DR(デマンドレスポンス)の活用や、蓄電池リソースの確保、あるいは価格転嫁可能な柔軟な料金メニューの開発など、「高コスト時代を生き抜くための構造改革」を今すぐ開始すべきです。
経産省資料URLはこちら https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/jisedai_kiban/system_review/112.html


