分散型エネルギーの新時代へ:「分散型エネルギー推進戦略WG」設置の激震と2026年への展望

なぜ今「分散型エネルギー推進戦略WG」なのか?

2025年12月19日、資源エネルギー庁は「分散型エネルギー推進戦略ワーキンググループ」を新たに立ち上げました。
本WGは総合資源エネルギー調査会配下の電力・ガス事業分科会の次世代電力・ガス事業基盤構築小委員会の下に設置されております。
これまで需要側(DR・家庭用蓄電池)と供給側(系統用蓄電池)で別々に議論されてきた施策を、「分散型リソース(DER)全体」として統合し、社会コストの最適化を目指すことがこのWGの使命です。
第1回 総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 次世代電力・ガス事業基盤構築小委員会 分散型エネルギー推進戦略ワーキンググループの資料はこちら

1.【アグリゲーター視点】「DRready」環境の整備と低圧リソースの開放

アグリゲーターにとっての最大の注目点は、「低圧リソース(家庭・小規模オフィス)」の市場本格参入に向けた環境整備です。

  • DRready化の標準化: これまで人の手(行動誘発)に頼っていた低圧DRを、機器の遠隔制御(自動制御)へとシフトさせるため、ヒートポンプ給湯機や家庭用蓄電池の「DRready(DR対応)要件」の策定が進んでいます。
  • 機器個別計測の解禁: 2026年度からは、需給調整市場において「機器個別計測」の活用が開始される予定です。これにより、スマートメーターを介さずとも機器単位での実績評価が可能となり、アグリゲーターはより多様なリソースを束ねやすくなります。
  • ビジネスモデルの確立: 特定卸供給事業者の届出数は129社(2025年11月時点)に達し、異業種からの参入も相次いでいます。今後は「価格競争による持続可能性の低下」を防ぎつつ、安定した収益モデルをどう構築するかが議論の焦点となります。

2.【系統用蓄電所オーナー視点】「収益モデル」の多角化と接続課題の解決

系統用蓄電池事業者(蓄電事業者)にとっては、投資判断の基準となる「収益性」と「接続予見性」の議論が加速します。

  • 収益モデルの最適化: 蓄電池は需給調整市場だけでなく、卸電力市場や容量市場、さらにはFIP再エネのインバランス回避など、複数の価値を組み合わせる「マルチ収益モデル」が前提となります。WGでは、これらDERを活用した最適な収益モデルの検討が課題に挙げられています。
  • 接続ルールの見直し: 多数の接続申し込みによる接続待ち(長期化)に対し、接続ルールの見直しなどの対応も検討項目に含まれています。
  • 社会コストの最適化: 系統増強という「系統側の対策」と、DER活用という「需要・供給側の対策」のどちらがコスト効率的かという視点で、最適なリソース配分が議論されます。

3.【市場へのインパクト】需給調整市場・容量市場への影響

DERの拡大は、既存の電力市場の構造を大きく変える可能性があります。

  • 需給調整市場: 低圧リソースの参入(2026年度〜)により、調整力の供給主体が大規模火力から分散型リソースへとシフトしていきます。特に一次・二次調整力といった「高速応答」が求められる領域でのDER活用が期待されています。
  • 容量市場: すでに「発動指令電源」としてDRを含むリソースが約639万kW(2028年度向け)落札されています。今後は、長期脱炭素電源オークション等も含め、DERが「供給力」としてより安定的に位置づけられるための制度整備が進むでしょう。
  • フレキシビリティの急増: IEAの予測によれば、先進国のフレキシビリティ必要量は2035年に2024年の約3倍となり、その約50%を蓄電池とDRが占めるとされています。

🚀 今後の注目すべき動向

本WGの議論を通じて、以下のスケジュール感で制度が動くことに注視が必要です。

  • 2026年度:低圧リソースの需給調整市場参入・機器個別計測の開始
  • 次世代スマートメーターの導入とIoTルートの活用(2025年度〜順次)
  • 第7次エネルギー基本計画の具体化: 蓄電池・DRを「電力システムの柔軟性供出の要」と位置づける政策の具体化。

💡 エナジーアグリラボの分析

今回のWG設置は、分散型エネルギーを「特定の実証」の域から「電力システムの基盤」へと昇華させる強い意思の表れです。特に「サイバーセキュリティリスク」や「持続可能な価格形成」が共通課題として挙げられた点は、商用化フェーズへの移行を象徴しています。

アグリゲーターや投資家の皆様は、単一の市場に依存するのではなく、2026年の制度改正を見据えた「リソースの多様化」と「高度な制御技術の確保」を今から準備すべき時期に来ています。

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