【審議会インサイト】容量市場の現在地と未来(第110回制度検討作業部会レポート)
2026年1月23日に開催された「第110回 制度検討作業部会」にて、将来の日本の電力供給力を左右する「容量市場」について重要な報告と議論が行われました。 今回は、前回に引き続き先日結果が公表された「2029年度実需給向けメインオークション」の結果を振り返りつつ、今後予定されている「価格基準(Net CONE)の大幅な見直し」について解説します。
1.そもそも「容量市場」とは?(30秒でわかる基礎知識)
私たちが普段使っている電気には、2つの価値があります。
- 電力量(kWh)の価値: 実際に使った電気の量。卸電力市場で取引されます。
- 供給力(kW)の価値: 「いざという時に発電できる能力」。これが容量市場で取引されます。
容量市場とは、4年後の「発電できる能力(将来の安心)」をあらかじめオークションで確保し、その対価を発電事業者に支払う仕組みです。これにより、発電所が維持され、将来の停電を防ぐことを目的としています。
2.【速報】2029年度向けメインオークション結果(2025年度実施)
2025年10月に実施された、2029年度に電気を供給するためのオークション結果が報告されました。 結論から言うと、必要な供給力(約1.6億kW)は無事に確保され、将来の安定供給に目処が立ちました。
エリアごとの約定価格(1kWあたりの価格)
今回のオークションでは、エリアによって価格に差がつきました。
エリア
約定価格(円/kW)
結果のポイント
北海道
14,972
全国で高い水準となりました。
東北・東京
15,111
全国で九州と並び最も高い水準となりました。
中部・北陸・関西・中国・四国
12,388
基準となる価格に近い水準で決着しました。
九州
15,112
全国で最も高い水準となりました。
※約定総額(発電事業者に支払われる総額)は約5,145億円となる見込みです。この費用は、最終的に小売電気事業者(新電力など)が「容量拠出金」として負担し、電気料金の一部として広く薄く回収される仕組みです。
3. 今回の議論の焦点:制度の「大きな転換点」へ
今回の審議会では、単なる結果報告だけでなく、「将来の価格基準(Net CONE)を見直す」という非常に重要な方針が示されました。
■なぜ見直すのか?(現状の課題)
現在の容量市場の価格基準(上限価格などを決める計算式)は、「2015年時点の発電コスト」を元に作られています。 しかし、ここ数年で以下の変化が起きています。
- インフレ・資材高騰: 発電所の建設・維持費が上がっている。
- 脱炭素化の要請: 蓄電池や水素発電など、新しい設備の導入が必要だが、コストが高い。
今のままの「古い(安い)基準」では、新しい発電所や蓄電池への投資が進まない恐れがあります。
■決定した方向性
国は、「最新のコスト状況(インフレや脱炭素技術)を反映した、新しい価格基準(Net CONE)を設定する」方向で検討を進めることを確認しました。
■ビジネスへの影響
- 発電・蓄電池事業者にとって: 価格基準が引き上げられれば、正当な対価が得やすくなり、新規投資(特に大型蓄電池など)への追い風となります。
- 小売電気事業者・需要家にとって: 将来的に支払う「容量拠出金」が増加する可能性があります。コスト上昇リスクを見据えた経営戦略が求められます。
エナジーアグリラボの視点
今回のオークション結果は「安定」していましたが、水面下では「投資を促すために価格を引き上げる」という大きな制度変更が動き出しています。 特に蓄電池ビジネスを検討されている事業者様にとっては、この「Net CONE見直し」のタイミングが、参入の好機(または戦略修正の岐路)となるでしょう。
当社では、こうした制度変更が各社の事業収支に与える影響を精緻に分析し、最適な事業計画の策定をご支援しております。


